Interview

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GMO VenturePartners | シリコンバレー・ラボ

村松&中川

 

YCDemoDayの濃厚過ぎる2日間

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世界の投資家の食欲が止まらない。ますます旺盛に、凄まじくなっている。

この食欲の増大が、多数のユニコーンを短期間に生み出しているし、ユニコーン自身の時価総額上の成長もまた凄まじい。

そして投資家の胃袋を満たすため、ますます多くの起業家が必要とされる。

そんな訳で、よい起業家を量産する装置 はますます需要が高まっている。

そして起業家が優位な状況がさらに加速している、

そんな印象だ。

YC Demo Dayに二日間参加して感じたのが、この社会背景だ。

 

Y Combinator。
一般社会にはほとんど知られていないこの風変わりな名前(以下YC)も、スタートアップ・ファイナンス世界においては知らぬものはいない。
競争も激しくなり、昔ほど突出した存在ではなくなってきている感もあるが、それでもシリコンバレーエコシステムの上流・インキュベータの最高位に君臨している事は間違いないだろう。
2005年の設立以来800社以上をインキュベートし、卒業生にはAirbnb、Dropbox、Stripe、Docker、Instacartなど、ありえないレベルの錚々たる顔ぶれが並ぶ。
彼らが卒業後に調達した金額は3600億円だとか。無論全員ではないが、有望な卒業生にはAndreessen Horowitz(以下A16Z)をはじめ、トップVCがわれ先にと投資する。ここにおけるVC間の競争は非常に激しい。
3ヶ月のコースの卒業式とも言えるDemo Dayには、実績あるトップVCのパートナークラスだけが招待される。クラブディールの生産源、閉鎖的なコミュニティなのだ。
 
シリコンバレーの縮図がここ見て取れる。
似たようなサービスも起業家も世界中にいるのだが、起業家として同じレベルの優秀さで同じようなプロダクトであっても、シリコンバレーにせよ、YCにせよ、この場所にいることにより成功確率も、アップサイドも、格段に上がる。
なぜか。
一流VCも、爆発的に増大する案件の中から「検討に値する案件」を選び出す事自体が容易ではない。それゆえに、一定のフィルターを通った案件は優先される。そのフィルターは長年のVC間のネットワークであったり起業家ネットワークだったりする訳だが、YC卒、というフィルターも相当な効果があるとされる。
そしてひとたび一流VCが投資するとどうなるか。例えば「A16Z backed」となると、よい会社(ユニコーン:時価総額1000億円企業)候補に違いないと他のVCの見る目が一変し、採用上も次の有望転職先を探すGoogle facebook Appleからの一流人材を確保しやすくなる。営業上も顧客への安心材料となる、すべてが高回転を始める。つまり錬金術が始まるのだ。
 
この(大げさ過ぎるかもしれない表現になるが)ユニコーン製造メカニズムがどんなものなのか。
今回は内側からそれを体感する事が出来たが、参加者達の声を拾えば下記のようなものになる。
 

「レベルが非常に高くなった。投資対象がありすぎて選べないと思うよ。」

前回バッチのOB談。彼らは前日に全てのピッチを見るのだが、比較感としては信頼出来る材料だろう。彼自身興奮しきっていた。

 

「投資家側が厳格に評価される。起業家側に評価され、どんどん入れ替わる。」

投資家の行動についての、起業家サイドからの深い理解に基づく「Handshake Deal Protocol」()。また、詳しい内容はここには記載できないが「素行の悪い」投資家をコミュニティから締め出すための恐るべき仕組みが存在する。

 

「分野が多様になった。」

毎回参加しているgoogle出身の個人投資家が漏らした。彼が投資対象とする領域の比率は従来に比べて年々減ってきていると言う。

 

「レベルを上げるために、すでにサービス開始した会社を複数つれて来ているよね。確かに3ヶ月でサービス創るのにも限界があるからね。でもどれが次のユニコーンになるのかは、誰にもわからないと皆言っているよ。有名になった「Product Hunt」 だけど、夏の時点では目立たない普通の一人だった。」前回バッチの別のOBは言った。その時点では誰にもわからないという事だ。

 

詳細はTechCrunchがレポートしているので割愛するが、

簡単にまとめてしまうと、1)身近な問題解決系・2)大きな社会問題解決系、ここまではネット系、

それ以外に、3)ヘルスケア、4)バイオ系やロボット、ロケット系と、確かに非常に多様だった。

 

しかし今回の特徴は、ある程度実績がすでにある会社を世界中からスカウトしてきているところだろう。週次の売上の伸びが30%~60%であることが普通であり、あるいはそうでなければ、Run Rate(年商見込み)が$1M超えのスタートアップが多い。それ以下は足切りされているのか。

むしろフリーミアムで売上がゼロだとかいう会社はほとんどない。それが今回からの明確な変化のようだ。

インド、香港、シンガポール等多様な地域から参加しており、世界選手権の様相を呈している。

 

100社超のプレゼンを聞いて覚えきれない程の面白そうなアイディアやプロダクトや成長トレンドを目の当たりにして熱が出そうだが、数社は当方にとっても非常に興味深いものがあった。進展を期待したい。

 


 

そんな二日間であったが、ところでベイエリアについてである。

YCとは別にここには膨大なチャンスが埋まっているので、我々も、その活用に余念がない。ラボなのだ。

 

市場:ベイエリアは、おそらく世界でもっともイノベーター層が消費者として生活する、人口800万人の一大市場である。ここで成功すれば全米展開が可能であり、同時に世界の各市場への最適化も行うことができる。

 

 

セブンイレブンに普通に設置されたアマゾンロッカー。驚き、若干不機嫌に。

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投資先であるIoT関連の充電アプリ。来年にはベイアリア中のカフェでスマホの充電が可能になるだろう。

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Apple Pay。スーパーでも普通に使える。アプリでも普通に支払い手段に含まれている。もはや日常になっている。おそるべき未来が、ここでは現実の生活に。

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この市場では、プレーヤー:人脈豊富・経験豊富・才能豊富な創業者、幹部、メンバーの候補が大量に揃っている。

世界の出先:提携に必要な大手企業の出先が世界中から集まっている

投資家 :無論、世界中から集まっている

パズルのピース:グローバルな成長に必要なあらゆる問題を解決する、サービスとその提供者達が揃っている。

 

思わず、言い古された事を改めて書いてしまうが、

世界の覇者を生み出すのに必要な構成要素が全て揃っている。世界のラボなのである。

 


 

ここで勝負する日本人達、当社投資先

 

そうであれば、シリコンバレーを大いに活用すればいいじゃないか。

確かに、日本にも、アジアにも、シンガポールにも、シリコンバレーは必要だ。しかしそれとは別に、ここをもっと自分の世界展開のために、活用するべきでもある。

GMO VenturePartnersにも、メルカリ、Kaizen等、当初は日本を主力市場とする投資先を含め、合計6社の投資先がある。

この「世界のラボ」を活用出来る彼らには、世界への大きな飛躍が期待される。

 

 

メルカリ

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米国でのサービス開発の手法、マーケティング手法、KPIがどう日本と違うか、などなどここでは書けない事ばかりで残念だが、

「日本発のサービス・プロダクトで米国で勝負するための3大ポイント」とも言うべき重要ファクターを確認する事が出来た。やはり実践者は違う。

 

 

Kaizen Platform

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須藤社長はご不在だったが、Kaizenさんサンフランシスコオフィスにお邪魔した。

ゼロから立ち上げてもうこの規模に。全米をカバーする営業体制が着々と整う。

 

 

WalkSource

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YCの前回バッチ卒業後半年。小さなチームながらエンジニアリングレベルが高い上にしっかり法人営業も出来ている、成長速度が速い印象。「世界の先端市場としてのベイエリア」にて、ターゲットであるホテルに徹底的に営業、大口の需要=しっかり実需をとらえたところ。日本人ではないが、、

 

 

某社

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この伝統ある共同創業スペースで、着実な一歩を踏み出された方。社名は出せないのだ。乞うご期待。

 

 

さてユニコーンはどこにいるのか。

我々はインキュベーターではなく、純VCでもなく、かといって典型的なCVCでもない。しいて言えば、その全てだ。誰の、どんな枠にもはめられない。問題発明・価値創造のために、この地でも柔軟な活動を展開していく。

引き続きGMO VenturePartnersにご期待頂きたい。

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